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第17話 崖の上の哲学者(02)

Author: 星琴千咲
last update Last Updated: 2025-07-05 10:11:23

悠治は本当にバカなことをするなら、場所はどこだろう……

とにかく、緊急事態だから、雪枝に電話して聞いていみよう。

「お兄ちゃんが思い入れのあるところ?」

「理由は後で教えるから、とりあえず、心当たりの場所を教えてくれないか。好きな旅行地や小さい頃よく行てた公園とか、昔住んでた家とか……」

「お兄ちゃんはずっと引きこもりで、ほぼどこにも行かないです。どこが好きなのか、よくわかりません……小さい頃よく行ていた公園も数年前にデパートに改造されました……」

「昔住んでた家は?」

「それもかなり前に売られました」

「一応、場所を教えてくれないか?」

「はい…あの……」

いつもの大介と別人のような早口と固い質問方に雪枝は我慢できずに疑問を口にした。

「お兄ちゃん……お兄ちゃんは何かあったのですか?!」

「……」

あっても、雪枝だけには知られたくないんだろう。

そう思うと、大介はハンドルを強く握り、すべての事情を胸に抑えた。

「……大丈夫だ。ちょっと喧嘩しただけだ。オレは必ず彼を連れ戻す」

大介はまず雪枝の言った昔の家に行ってみた。

高級住宅区にある立派な一戸建てで、窓に光が灯っている。

もう終業の時間になって、帰宅途中の住民が多くいる。

とても自殺できる場所じゃない。

悠治は「両親のところにいく」と言い出したから、両親と強いつながりのあるところに行った可能性が高い。

家族が一緒に暮らしていた場所じゃなかったら、ひょっとしたら、あの事故の場所か……

大介はもう一度あの事故の場所を確認してから、ナビの案内で例の高速道路に向けた。

事故が発生した道路は、かなり辺鄙な崖の上にある。

大介がその近くに到着したとき、空はもうすっかり暗くなった。

幸い、近いところに駐車場があった。

大介は車を泊まったら、急いで事故の現場に駆け付けた。

 

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